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木造阿弥陀仏如来及び両脇侍立像(重文)

 タイムカプセルとは現在を未来に伝えるため、品物や記録などを収めて地中に埋めておく容器です。卒業記念に埋めたのを同窓会で掘り出し、懐かしく思ったりされた方もあると思います。そこでは数十年の時間差を実感することができます。しかし、数百年の時間差を体験できる場所があります。それが福山市の鞆の浦です。
 鞆の浦の禅寺、安国寺の釈迦堂の本尊仏である阿弥陀如来像 (国指定重要文化財) を昭和24年に修理をした際、像内からさまざまな納入品が発見されました。経本、念仏帳、勧進帳 (寄進の記録) の他に短刀や横笛も出てきました。
 そしてこれらが仏像の中に納められた文永11年 (1274年) から誰の手にも触れられないまま、700年の時を過ごして現代の世に現れたことが分かりました。仏像そのものがタイムカプセルだったのです。

 経本には血書もありました。血書とは自分の血液を筆に含ませながら、お経一巻を写経しているのです。いかに真剣な願いがこめられているかお分かりいただけるかと思います。短刀は当時の男性が常に身に着けていた「腰刀」といわれるもので、同じようなものは草戸千軒遺跡からも出土しています。
 しかし、山岸素夫先生 (日本武具武装史研究会会長) によれば相当高度な技術で作られたもので、地方の人が所持するレベルを超えたものだとされています
 中でも長さ40.6cmの横笛は「龍笛 (りゅうてき)」といわれ、雅楽 (ががく) の主要な管楽器です。雅楽とは平安時代、宮廷で演じられた音楽で、今でも神前結婚式に流されるテープがこれです。現代の名人笛師、田中敏長師は「我われの持っている製作技術では真似のできない高度な作品だ」と印象を述べられています。
 素材の竹の肉が通常より厚いのが特徴で、日本の竹ではなく、中国大陸からの渡来品の可能性があると高桑いづみ先生 (東京文化財研究所芸能部主任) が指摘されています。また、正倉院所蔵の横笛との共通点もあるそうです。
 この笛の音色がリョウリョウと釈迦堂いっぱいに鳴り響きました。昨年12月10日のことです。高桑先生や田中師の詳細な調査研究の後、吹奏して音色を確かめてみようということになり、笛がもともと納められていた釈迦堂の仏像の前に場所を移しました。初めに高桑先生、次いで田中師が笛に息を吹き込むと、700年の眠りから覚めた笛の音が居合わせたものの胸を打ちました。

 安国寺では毎年の開山忌 (寺の創始者の法要) を、今年も10月13日に執り行います。今年は間に合いませんが、来年の開山忌には、田中師のもとで製作が進められているレプリカ (複製品) の笛での演奏が奉納できればと願っています。
 横笛とは少し異なりますが、安国寺にかかわりの深い尺八が十数人の虚無僧 (こむそう) によって、11月3日の午前中、鞆の町並みを練り歩きながら演奏されます。
(笛などの納入品は一般公開されていません)。

 

 

仏像内からみつかった横笛(重文)

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